この講義では、基本的な電磁気学の学習が終わっている学生諸君を対象に、Maxwell方程式を前提として、電磁波とその伝播、交流回路とインピーダンス、幾何光学、物質中の電磁気学、散乱と回折などを述べる。電磁気学理論演習4と密接に連携し、必要な数学的な課題や基本的な問題、発展的問題を解くことで「電磁気学」の理解が促進されるようにカリキュラムを組んだ。毎回の講義では、毎回テーマを決めてその内容を理解してもらうように考えてある。
電磁気学は見事な古典物理学の集大成である。よく知られているように、相対論も電磁気学の理論体系の緻密な検討から生み出された。したがって、力学のように相対論の荒波をうけて修正する必要はなかったのである。このような見事な体系を数式で表現したのがMaxwell方程式であり、物理学を志すものにとってはその理解が必須である。しかし、この方程式は奥が深く、いろいろな課題に適用してはじめてその味わいがわかってくる。そこで電磁気学4では、具体的な課題を幾つかとりあげて、電磁気学を学ぶ。
例えば、Maxwell方程式から導かれる動的な電磁場である電磁波の様々な特性は、電気回路、光学、物質との相互作用の理解に欠かせない。電磁気学4では、前半でこの点を集中的に学ぶ。後半では、散乱と回折現象をとりあげる。これらの学習は、量子力学における波動関数の理解に役立つ。量子力学に現れるトンネル効果、散乱現象などは、ほとんど電磁気学と同じ物理で理解可能である。
本講義では下記の教科書を指定する。Jacksonの電磁気学とFeynman物理学である。これは学生諸君が毎回の講義に対して準備や復習を積極的にすることを期待してのものである。Jacksonの電磁気学は講義では述べることが出来ない緻密な理論構成の補強となるだろうし、後者からは楽しく示唆に富んだ語り口で様々な実例を学ぶことができる。是非、手に入れて座右の書としてほしい。
田中耕一郎
1.J. D. ジャクソン著, 西田 稔訳, 電磁気学(上)原書第3版,
物理学業書90 吉岡書店(2002).
2.J. D. ジャクソン著, 西田 稔訳, 電磁気学(下)原書第3版,
物理学業書92 吉岡書店(2003).
3.ファインマン、レイトン、サンズ著,宮島龍興訳, ファインマン物理学 III 電磁気学,
岩波書店(1969).
4.ファインマン、レイトン、サンズ著,宮島龍興訳, ファインマン物理学 IV 電磁波と物性(増補版,
岩波書店(2002).