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Research/Recent results のバックアップソース(No.6)

&size(18){&color(blue){''最新成果を紹介します    ''};}; (研究成果のリストはこちらへ'''   [[Papers]]''')
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**水のテラヘルツ領域の複素屈折率の精密決定に成功しました [#x1dd504b]
"Origin of the fast relaxation component of water and heavy water revealed by terahertz time-domain attenuated total reflection spectroscopy", '''Hiroyuki Yada, Masaya Nagai, Koichiro Tanaka  ''' 
#ref(http://www.sciencedirect.com/science?_ob=ArticleURL&_udi=B6TFN-4TDVMGX-7&_user=10&_rdoc=1&_fmt=&_orig=search&_sort=d&view=c&_acct=C000050221&_version=1&_urlVersion=0&_userid=10&md5=973eb1cb6268a90f0f137541ef941057,, Chemical Physics Letters 464, 166-170 (2008).)
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水は科学において重要な物質であり、これまで多くの科学者が研究にとりくんできた。その過程で水の特異性が明らかにされてきた。例えば、4℃で密度が最大になることや異常に高いプロトン易動度などの性質があげられる。これらの性質の起源はいまだ明らかにされていないが、水の動的構造に起源を持つと考えられている。

水の動的構造とは、液体の水を構築する水素結合ネットワークそのものと、サブピコ秒(ps=10-12 s)で起こる水素結合の生成消滅過程のことである。最近の研究では、ネットワーク構造よりむしろ揺らぎが水の特異的な性質に重要な寄与をしているということが明らかになってきている。

これまでの水の動的構造の研究においてはラマン分光法を用いた構造の研究が主であった。そこで、この揺らぎを解明することが強く求められている。そのための手法として、最近の超短パルスレーザーの発展で可能になったテラヘルツ時間領域分光法(テラヘルツ=THz=1012 Hz=33 cm-1=4.1 meV)が期待されている。この方法は赤外分光に属し、選択則からいって、揺らぎを敏感に検出できる方法である。しかも、電場の実時間測定であるため、サブピコ秒領域の分極の時間相関関数を直接測定でき、複素誘電率をクラマース・クロニッヒ変換なしで求めることができるため、従来のフーリエ変換赤外分光とは違って、小さい強度を持つモードであってもつぶさに調べることが可能である。実際、テラヘルツ時間領域分光法を用いて水の研究がなされてきたものの、水の吸収の強さから、測定は困難を極め、限られた周波数領域(~2 THz)でしか行われてこなかった。この技術的な不足から、テラヘルツ時間領域分光法は水の動的構造研究に強力な手法であるにもかかわらず、その特長を十分発揮されずにいた。~
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#ref(water1.jpg,center,60%)
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そこで、本研究では、水などの吸収の強い物質の複素誘電率の精密測定に適した方法として、テラヘルツ時間領域全反射減衰分光装置を構築し、その広帯域化に取り組んだ。特に全反射分光法に特化した温度可変装置を独自に開発し、水の精密な複素誘電率の温度依存性測定を初めて可能にした。上図に広い周波数領域の水の複素誘電率を示す。最も低周波には20GHzにピークをもつ回転緩和モードが存在する。本研究ではその高周波側の1-2 THzに存在する「速い緩和モード」の正確な抽出および温度依存性の精密測定から、先行研究とは大きく異なり、「速い緩和モード」温度依存のほとんどないモードであることを明らかにした。この結果を過去の超臨界水のマイクロ波分光の結果を組み入れて検討した結果、このモードは常温常圧で過渡的に生じている水素結合のない自由な水同士の衝突過程に起因することが強く示唆されることがわかった。これは、常温常圧で自由な水が存在していることを示す。これらの結果は、最近報告されたRaman induced Kerr effect spectroscopy およびX線発光分光の結果と定性的に一致する。

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**次のトピックス [#x1dd504b]


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